走れ!なみへい!

走って食べて読書して。東京在住アラサー女子の気ままなdiary

『オードリー・タンの思考 -IQよりも大切なこと-』by 近藤弥生子: 共有すること・シェアすることで見えてくる明るい未来

今週はこちらの本を読み終えましたので感想を書いていこうと思います。

f:id:namimiyahara:20210821110624p:plain

オードリー・タンさんは台湾のデジタル担当大臣ですね。

IQ180を超える、若干35歳の大臣。コロナ禍で世界中が混乱する中、どの国にも率先してマスクを皆に平等にいきわたらせるアプリを3日で開発するなど、ITの側面からコロナ阻止に大きく貢献し、一躍脚光を浴びていました。

彼女は日本のテレビでもよくとりあげられているので、私もたまに目にしていましたが、彼女の穏やかな人柄、優しい声がとても好きです。社会が想像する一般的な「理系の天才系」の方とは少し違う印象。今回この本を読んで、彼女のことが更に好きになりました。

有名大学の出身なのかなと思っていましたが、彼女は何と中卒。そして彼女は、男性として生まれ、その後女性に性転換したLGBTQ。自身は、女性とも男性とも区別しない「性別無しである」と話しています。異色の経歴をもつオードリー・タン。彼女を若干35歳で大臣に起用した台湾という国がまずはスゴイです。

オードリー・タンの可能性をここまで伸ばし、開花させた大きな立役者は、おそらく彼女のお母さんでしょう。彼女は子供のころからずば抜けて頭がよく、教師を困らせる存在であったようです。友人ともなじめず、転校を繰り返し、ついに不登校になってしまうオードリー。

彼女のおばあさんやお父さんは学校へいくことを強要しようとし、オードリーは一時精神不安定になってしまうのですが、お母さんは彼女がいきたくないなら無理やり生かせる必要はない、と、毎日彼女をハグをして寝たそうです。

お父さんはそんな状況に耐えられなくなって、なぜかドイツに留学にいってしまうのですが笑、そんなお父さん不在の環境でオードリーの才能は少しずつ開花していきます。そしてお父さんとオードリーの関係が修復できた頃、家族はお父さんの住むドイツへ移住を決めるのです。

ドイツで再び学校に行き始めたオードリーは、多くの価値観、人々と出会い、たくさんのものを吸収します。そして小学校卒業時に自らの意思で「台湾に帰って、自分が教育を立て直したい」と両親に宣言。散々いじめられて嫌な思いしかない台湾に帰る必要はない、と両親は説得しますが、彼女の意思は固かったようですね。

結局台湾の中学も合わずに退学となりますが、その後彼女は19歳で起業。その後、市民の声を反映させ、世の中を動かす社会運動・学生運動などにITの側面から積極的に関与していきます。

彼女の働く上でのキーワードは「シェア」と「透明化」ではないでしょうか。

例えば、会議で話したものはすべて議事録化し、知識も惜しみなく国民全員にすべてシェアする。すべて情報が公開されるから、皆は安心するし、不満をもった場合は意見を書き込みできる仕組みもあります。その反対意見が●件を超えた時点で、それに対して企業・国は真摯に向かい合い、検討するというような明確なルールも設定します。彼女はITという技術を使って、透明性があり、よりフェアに国民が意見を言える仕組みづくりに貢献したと思います。

その「シェア」と「透明化」ですが、彼女はそれを大臣となった今も続けています。台湾の国民が政府に対する信頼度が厚いのは、この部分が大きく影響しているかもしれません。

少し話はずれますが、著者はこの本の中で「ハクティビストになろう」と呼び掛けています。これは、「ハック(hack):生産性を上げるための工夫をする」と「アクティビティビズム(社会を変えるための行動をする)」がかけ合わさった言葉で、当事者意識を持ち、自ら社会を変える立役者になろう、というメッセージです。台湾では今、オードリー・タンの影響もあり、そのように声を上げ、変革を起こそうとする人々が増えてきているそうです。

良いと思ったメッセージをクリック&シェアすること、そこからさらに派生して、行動に変えていくこと、不満をもっているだけ、文句を言っているだけではダメ。実際に行動することで世の中を変えられるとこの本には書かれています。

確かに、香港の学生運動や #MeTOO や BLMの運動など、人々が声をあげることによって世の中が実際に動く時代になってきていると感じています。恐れず声を上げてみること、行動すること、インターネットがここまで広がった今だからこそ、そのような声は広がりやすく、仲間も集まりやすい。一人一人の意識の変化で本当に世の中を変えてしまえるのではないか、そう感じた一冊でした。

彼女のような若くて、優秀で、マイノリティの方の気持ちが理解できる方が日本の国政にも増えていってくれると良いなと思います。

www.amazon.co.jp