走れ!なみへい!

走って食べて読書して。東京在住アラサー女子の気ままなdiary

『対岸の彼女』by 角田 光代: 子供の友情を侮ることなかれ

年齢なのか、ライフステージの移り変わりなのか、友人との関係性が少しずつ変わってきたと感じるこの頃。これまで仲良くしてきた友人との会話に少しずれを感じたり、違和感があったり、何ともいえない寂しさを感じていた時、この本の帯のメッセージが目に入りました。

「結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう」

読むしかない!そう思って、衝動的に購入してしまった一冊の本。本日はこちらのレビューをしてみたいと思います。

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角田さんの本はこれまでも読んできましたが、いつも読みやすく、ストーリー展開が面白い。共感できる部分も多く、私も夢中で2日くらいで読み終えてしまいました。

が、結論、私の感想としては、帯のメッセージとは全く違うものでした。

子供時代の友情は決して甘く見てはいけないということ。それは家族との絆をも越える強固なもので、本人の人生に大きな影響をもたらすということ、これが私の感想です。帯の内容と全然違うけど大丈夫かな、、、と自分の感性が不安になります。。。

このストーリーは、①女性社長と、その会社にパート入社した主婦と話②女性社長の壮絶な子供時代の話、が交互に描かれています。私は②の方を興味深く読み、先ほどのメッセージを感じました。

社長(葵)は小学校時代、壮絶ないじめにあい、不登校になります。そしてそれを心配した両親は母方の実家の近くへ引っ越しを決め、娘を別の中学校に通わせることにします。

葵はそこで魚子(ナオコ)に出会います。性格が全く異なるこのふたりですが、次第に強い絆で結ばれて行きます。放課後も一緒。夜帰ってからも電話でふたりは話続け、家族のこと、学校のこと、将来のこと、たくさんのことを共有していくのです。ふたりの絆は次第に深く、強固なものとなり、誰にも立ち入れない領域になります。

そしてこの二人は夏休みに約1か月間、リゾートバイトに出かけ、田舎の民宿に寝泊まりしながら働くことになるのですが、そこから物語が急展開します。

日常に戻りたくない、ずっと二人でこれから先も一緒にいたい。二人だったらどこまでも行ける気がする、、、家族や学校、日常に息苦しさを感じていた二人は、そこから解放され、今まで感じたことのない幸せを手にするのです。レズビアニズムではないと思いますが、それに近いといっても良いかもしれないくらいの愛情・信頼が二人の間に育まれます。そして最後、このふたりは衝撃の決断をします。

これを読んで、映画『Stand by Me』を思い出しました。こちらは男の子ですが、子供同士の堅い友情の物語ですよね。

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『Stand by Me』by amazon

子供の世界ってとても狭いのですが、その狭い世界や価値観の中で、彼ら、彼女らなりにとても深く真剣に考えているんだと思います。家族のことや学校のこと、将来のことに対して悩んだり涙したり、本気で言い争いをしたり。その時を共に過ごした仲間とは、家族以上のかけがえのない絆や信頼関係が生まれるのでしょう。その親友とと過ごす中で、子供は大きく成長していくのですね。

対岸の彼女』の中で、葵とナオコは最後に大人の手によって引き離されてしまうのですが、この年代の彼女たちにとって、お互いの存在がどれだけ大切かというのを痛いほど感じました。それ以外何もいらないくらい、その時の二人にはお互いの存在が必要だったと思います。

大人は子供の世界や子供の友情を甘くみてはいけない。この友人との強い絆はまさに子供の居場所であり、この領域に大人は手出ししてはいけない。この中で信頼、勇気、希望、愛を学ぶ子供も多いのだと、この本を読んで感じました。

私も葵やStand by Meの少年くらいの年代の頃(小学校高学年~中学生くらいかな)、心から信頼している大好きな友人がいました。懐かしい、、、今はお互い多忙でなかなか会えなくなってしまいましたが、またコロナが明けたら会いに行こうと思います。