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『人間の幸福』by 宮本輝: 極限状況に追い込まれて初めて気づく、人生で本当に大切なもの

本日はGWに読んだ本のレビューをします。

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『人間の幸福』by 宮本輝

宮本輝のゾッコンの私に母が貸してくれた1冊。GW中に1ページずつ大切に読みました。

宮本輝の作品は、人間の本質に気づかせてくれるものが多いですね。

私が宮本輝に夢中になるきっかけとなった『流転の海』は、人間ののプラスの側面の描写(おせっかいで暑苦しいけど、人情深く温かい主人公)が美しくて、私はその部分に大きく魅了されたのですが、『人間の幸福』は人間の弱さや厭らしさというマイナスの側面を前面に出した作品でした。

個人的には読んでいくのが大変でした、、、なぜなら主人公の敏幸は、私が一番嫌いなタイプだったから。でも、彼は物語の中で少しずつ変わっていきます。

物語は、敏行が住む杉の下マンションの隣人が殺害されたところから始まります。杉の下マンションの住人たちは、この事件をきっかけに、仲良くしていたマンションの住人を殺人容疑で疑い始めたり、自分が警察に殺人の疑いをかけられないよう、どうしても隠したいプライベートな部分(不倫など)が警察の捜査によって明るみに出ないよう、保身に走りだします。

その姿が本当に醜い。自分のちっぽけなプライドを守るのに必死で、他人の変な噂をたてたり、大切な人を傷つけたり。人々は大切なものを失っていきます。

最終的に主人公は自身の弱さに向き合い、そのプライドを捨て、人生で本当に大切なものを取り返しに行くのですが、なんだか人間の複雑さを考えさせられる小説でした。

人生で大切なものって本当はきっとたくさんなくて、すごくシンプルなはず。でも、多忙な日々を送る私たち人間はそれがわからなくなってしまうのですよね。無駄なプライドは捨てて、余計な仮面を何枚も取り除いた先に、やっと幸福がみえてくるのでしょう。

「人間の幸福」ってなんだろう。たまには休みの日にゆっくり考えてみるのも良いですね。宮本輝の良書。また時間を空けて読んでみたいと思います。

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