走れ!なみへい!

走って食べて読書して。東京在住アラサー女子の気ままなdiary

『錦繍』by 宮本輝: 真実の愛は人を成長させてくれる

今日は私の読んだ本について綴ってみようと思います。

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宮本輝の『錦繍

この本を手に取ったきっかけは、昔熱心に聞いていたBOOK BARというラジオ番組で(10年以上続いたこの番組は2019年3月をもって終了(涙))で大倉眞一郎さんが紹介してくれた『流転の海』がとても良かったから。

読み終えてから完全に熊吾(主人公)ロスになってしまい、違う作家の本を読んだけど全然ダメ。またあの時のような、ちょっと暑苦しいけど人間臭くて温かい熊吾のような登場人物に出逢いたい、ということで、また宮本輝に戻ってきました。

 

錦繍』は、愛し合いながらも離婚をした男女が10年後に再会し、怒り、困惑しながらも互いに成長していく物語。2人は出会うことなく、すべては手紙でのやり取りのみで物語が進んでいきます。

この本、大好き。やっぱり宮本輝はすごい。文章が繊細で美しい。頭を掻きむしりながら、時に涙しながら、何時間も、何日も机に向かって手紙を書いていたであろう主人公の姿が目に浮かびます。

そして最後は圧巻。人間の深い愛情と信頼、そして再生の力感じる本でした。真の愛は人を成長させてくれる。離れていてもそれは変わらないのですね。人生って難しい。でも生きるって素晴らしい。人間は強い。

昭和60年出版という、私が生まれる前にすでにこの世に出ていた物語。手紙のやりとり、というのが昭和らしくて良いですね。

時代は令和になり、たくさんのことが変わったけれど、いつの時代も人間の本質は変わらない。大切なことも変わらないことを『錦繍』は優しく気づかせてくれます。

そして30年以上経っても、美しい本はいつまでも美しい。

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